サンバの仲間のNちゃんとKくんの結婚式に参列した。
「結婚式、なんて形式的だよねー」などと、それこそ形式的な批判めいたものを日頃抱いていたものだが、きのうの結婚式は、たとえ形式であってもこういうのもいい、と思えるような得も言われぬものだった。とりたてて変わったことがあったわけでもないが、野外のプールのそばにしつらえた白い西洋風あずまやのチャペルで、Nちゃんが見せた笑顔はまさしく「幸せのオーラ」を発していて、たしかにその場にいた多くの人をも幸せにした。結婚指輪を交換し、花嫁のヴェールをあげ、新郎新婦が軽くキスをする。このキスの時、ふつうのカップルならほんの少し軽いくちづけをするだけだと思うが、Nちゃんカップルは「チュッ」と、もう漫画に描きたいくらいの音を響かせて可愛らしいキスを披露。若い牧師さんもつい笑ってしまうほどだった。ここまで天真爛漫に幸せなカップルを見るのも珍しいくらいだ。
続く披露宴も、商売をやっているKくんの家の関係で取引先などの来賓が多く盛大なものだった。しかし堅苦しくはなく、どこかなごやかな雰囲気がずっと漂っていた。そして、お開きも近くなってNちゃんが、前日にしたためたという「お母さんへの手紙」を読み上げることになった。読み始める瞬間まで笑顔で落ち着いていたNちゃんが、「おかあさんへ。今までずっと私を見守ってくれてありがとう・・・・」と読み始めるやいなや、涙で声が詰まって読めなくなった。い、いかん。これはひとたまりもない。当然ながら私にも涙がどっと溢れてきて止まらない。会場のあちこちでも鼻をすするもらい泣きの音がしている。後で聞いたらコワモテでなる?サンバチーム副会長K氏も「ついウルウルしてしまっていた」そうだ。
Nちゃんは8年ほど前にお父さんを亡くして、すでにお兄さんは結婚して家を出ていたので、母と娘のふたりぐらしだったのである。それを知っているので、ますます会場の客たちは涙を止められない。Nちゃんはとぎれとぎれに続ける・・「お父さんの分も幸せに暮らして下さい・・・」
続いて花束贈呈があり、締めくくりに新郎のお父さんが挨拶する。新郎のお父さんも涙声で「いや、すみません、Nの涙についもらいなきしちゃって・・・」。いいお義父さんだね、Nちゃん、かわいがってもらえそうだね。とまたこちらは涙の洪水になる。
2次会のパーティはそりゃすごい盛り上がりだった。新郎Kくんが自ら企画しプロデュースしたものだが(当日も新郎は走り回っていた)、サンバ界の主要メンバーがぞろぞろ来ていたし、ほかにもとにかくたくさん来ていて、祝福の輪の中でNちゃんはさらに輝いてまぶしかった。2次会の席で、サンバに参加する前からNちゃんの友人だったAくんがしみじみと「ああ、うれしいですねえ」と言う。「いろいろありましたもんね」。そう、「いろいろ」あったのだ。いつもいつも笑顔のNちゃんが、いつもいつも「何も問題がなく」過ごしてきたわけじゃない。それほど詳しく知っているわけではないし、彼女のプライバシーに関することなのであまりつっこんでは言えないが、さぞかしつらいだろうに、と周囲が心配するような状況もかつてあったのである。しかし私たちが知っているのはやはりNちゃんの笑顔だけだった。笑顔のNちゃんがむしろ心配になるくらいだった・・もしかして(あまりのつらさに)壊れてない?かって。ごく親しい同年代の女の子の胸に顔を埋めてひそかに泣いている姿を一度だけ目撃して、かえって安心したものだった。Aくんも、「ぼくが失恋してつらかったとき、話を聞いてもらってすごく助けてもらったんです。そのとき、私もいろいろあったのよ、なんて言ってたけど、ぼく全然知らなかったんですよ、その当時のことは。そのときはじめて聞いてびっくりした。でも自分のそういう経験からいろいろ親身になってくれてぼくは本当に元気づけられたんです。だから今日は本当に嬉しい」と言っていた。
そう、Nちゃんは「いつも笑顔」だった。それも「作った笑顔」では決してなかった。笑顔の裏につらさがかいま見える、ような笑顔ではなかった。きっと、つらいときでも幸せを信じられていたんだろう。つらい中でも楽しいことを見つけて、自然にそちらのほうに気持ちが向かっていける人なんだろう。 ドジもいっぱいして、「天然ボケ」と笑われるNちゃんだが、それはつまり見栄や体裁で自分を取り繕ったりカッコをつけたりするという傾向がない、稀代の素直さのゆえだと思う。
Nちゃんと私は別に「親友」というわけでもないが、だから本当に彼女のことをよく知っているかどうか自分でも分からないが、私は彼女に「天使」を見る。これは結婚したNちゃんへのご祝儀の発言ではなく、ずっと前から、Nちゃんは私が「ああなりたい」と思う理想像の一つだった。なにが感動したかって、つらい体験のあとで彼女がそれ以前にもまして輝く魅力を持ったまぶしいばかりの女性になっていったのを目の当たりにしたことである。それまでは可愛いけれどとりたてて関心を引く存在でなかったNちゃんが、それ以来、私にとって天使に見える存在になった。
Nちゃんはいつもとびきりの笑顔でいる。その笑顔は正真正銘に「天使の笑顔」だ。なぜなら見る人も幸せになってしまうから。そしてきのうの結婚式で、その笑顔はいつにもまして輝き、いつにもまして幸せのオーラを強めていた。そのオーラにあずかれた自分をラッキーに思う。Nちゃん、ほんとうにおめでとう!天使を手に入れたKくんも、ほんとにおめでとう(彼にもまた「いろいろ」あったからね(^_^;))。